(前回,時間の都合で記事を打ち切ったため,まだ朝の8時台までしか書いてないのに次へ突入という事態に…)
八幡浜から宇和島までは特急「いしづち1号」で29分の旅.途中,卯之町(うのまち)に停車する.卯之町は市町村合併によって誕生した「西予市(せいよし)」の市庁舎が置かれているところ.
この予讃線を走る特急は14往復ある特急「宇和海(うわかい)」(松山-宇和島)のほかに,岡山から特急「しおかぜ」が2往復,高松から特急「いしづち」が1往復ある.私が乗車した「いしづち1号」の高松発は朝の5時17分で,宇和島到着は9時26分なのだから,四国もなかなか広いのだなあ,という印象を受ける.
そして予讃線の終点,宇和島に到着.
駅構内で線路が終わっているため,3番ホームまであっても跨線橋や地下道はなく,1番ホームからはコの字型の連絡通路で2,3番ホームへ行く構造になっている.
雨に急かされて予定より早く着いたので,次の目的の列車までは2時間ある.
ただ,ここに到着するまでにガイドブックで宇和島を調べてみたけれど,名物の闘牛はやっていないようだし,なにより雨で街の散策も難しいかな…という感じだったので期待はせずに改札を出ると,何かおかしい.
これから乗る予土線の電光表示の行き先に「近永」という下調べ段階では見たことのない行き先が表示されていたからだ.そして改札前に置いてあるホワイトボードが目に入ってきた.
上:予土線運転見合わせのお知らせ(宇和島駅)
下:雨の宇和島駅前
やはり雨で運休していたか….
予土線は愛媛と高知をつなぐ唯一の鉄路であるものの,特急はおろか快速列車すらもない山間を走るローカル線で,県をまたいで移動する人間の数なんてたかがしれているのかもしれない.
この緊急事態に駅舎の中のベンチに座って対策を考える….
時刻表の「さくいん地図」で高知県へ抜けるルートを検索してみる.
宇和島からは,このまま海伝いに南下し,高知県宿毛市(すくもし)に抜け,そこから土佐くろしお鉄道で窪川まで行きJR線に復帰するというのが現実的な唯一のルートのようだった.問題はダイヤと,その接続だ….
大きい全国版の時刻表を持ってきていて良かった.すぐに主要なバス路線のページをめくり時間を調べる.宇和島から宿毛へはだいたい1時間に1本のペースで出ていて,次の宿毛行きは9:45発.あと10分もなかった.
駅で「清流しまんと2号」の指定券を払い戻し,駅前のバス停で宿毛行きを探す.すぐにバスが到着した.中乗り前降りの路線バスで,宿毛駅まで1時間51分の旅となる.
バスはほぼ国道56号線沿いに走ってゆく.宇和島市と宿毛市の間の距離は約63km.このバスは急行便などではないので,頻繁にバス停の案内テープが流れる.
このバスを運行しているのは宇和島自動車というバス会社で,会社のマークには旗の中に「宇」の字がデザインされたものが使われている.先ほどの宇和島駅前の写真で後ろに映りこんでいる建物がその本社だったみたい.途中宇和島市の「バスセンター」では業務用の荷物が大量に出口扉のそばの荷物用スペースに積まれた.鉄道では業務用の荷物を運んでいるのは見慣れていたけれど,路線バスでこのような光景を目にするとは.荷物は途中の岩松営業所と城辺(じょうへん)営業所で,いずれもそこの職員が待ち構えていておろしていった.
雨は南に進むにつれ激しくなり,通行止めになってしまうのではないかと思うほどひどくなっていた.そんななかでもバス停からはお年寄りが乗ってきては,また降りていく.このバスのほとんどは短距離の利用者であった.もちろん数えていたわけではなかったけれど,後からバス路線図で確認したところ80番目のバス停「県境」で高知県に突入,そのあとすぐの84番目「宿毛駅」で下車.運賃は1,750円.かなりの雨だったものの,ほとんど遅れることなく到着した.
左:宇和島自動車のバス(宿毛駅にて)
右:宿毛駅
宿毛駅といえば2005年に起きた特急列車が停車せずに車止めを乗り越え,駅の壁に激突するという大事故が起きたことで記憶に新しい駅だったものの,既に駅は復旧しており,営業も通常どおりに戻っていた.
11:31窪川行が出てしまった後で,次の列車は12:43の発車となっている.これは中村止まりで,中村からは特急「南風20号」に連絡していて,窪川着は13:53.不通だった予土線の列車に乗るコースでの窪川着が13:45だったのでうまく予定への本線復帰ができることになる.
列車が来るまでの時間でまずはきっぷを買う.私の持っている四国フリーきっぷはJR線のほか,この土佐くろしお鉄道の若井-窪川間に乗車できる.しあがってここでは宿毛-若井の乗車券と,中村-窪川の特急券を買う.窓口氏は土佐くろしお鉄道の出札補充券を発行してくれた.料金は1,820円.予土線不通のおかげでバスとあわせて3,500円の追加出費となってしまったけれど,本線復帰できるのだから御の字だろう.
ふらふらと店を見て歩く.産直の農産物売り場では「小夏」という品種の柑橘が売られていた.どうやら高知の特産らしい.小ぶりで,夏の早くから収穫できるためこの名があるという.
また,水槽に変わった生き物が泳いでいた.「土佐のクリオネ」のキャッチコピーとともに売られていたのは「タコクラゲ」.図鑑などによると体長15センチほどになるらしいけれど私が見たのは5センチほどのものだった.見てて非常に癒される.3匹500円だったけど,とても持ち帰れなさそうなので買いませんでした.それにしても,クリオネの実物はあまりに小さすぎるのでこっちのほうがおもしろいかも,と思ったのでありました.
昼食は駅のそばのファミレス風のところで,「四万十うどん」なるものをいただく.青海苔がのっかったあっさり風味のおうどん.美味いけど,もっと青海苔のってても良い.
改札が始まったのでホームに上がる.
この宿毛に駅ができたのは1997年のこと.第3セクターの土佐くろしお鉄道が国鉄さえも見切りをつけた中村線を継承し,さらに予定線であった宿毛線までも建設したことで,宿毛にまで鉄道がやってきたという経緯だ.
いろいろな角度で事故のあった車止めのあたりの写真を撮る.止まっているのは1両編成のワンマン列車.乗車率は5割ほどで,中村へ向けて発車する.
宿毛駅ホーム.駅舎に衝突の跡はいまはない.
宿毛線として1997年に開業した23.6kmをワンマン列車は30分で走破する.台風の影響で畑がところどころ水没しているのが見える.路線は高架が中心で危なげなく走ってくれている.終点の中村の直前で四万十川を渡った.日本一の清流と言われていても,私がみたそれは台風の影響で濁りまくったでっかい川でしかなかった.ことごとくついていないなあ….
中村では5分の連絡で特急「南風20号」へ乗り換え.
しかしその中村駅では反対側のホームの列車に移るだけだったにもかかわらず強い風と雨でびしょぬれになる.とても傘なんかさしていられない.そして悪いことに南風20号の乗車率は100%に近く,相席で通路側の席を確保するのがやっと.ここまでの疲れもあり,うとうとしながらの乗車で,車窓の印象がほとんど残っていない….
左:車窓からみた四万十川(具同-中村間)
右:中村駅(ものすごい雨だったので南風20号のデッキから撮影)
窪川で特急は下車して鈍行に乗り換えるという手はあったものの,あまりの雨のひどさにこのまま高知まで乗りとおすことに.高知着は14:55.このあたりで車窓を楽しめなかったのはとても残念だったなあ….